高い再現性とクリーンなテイストに仕上げることができるのが特徴のデルターコーヒープレス(Delter Coffee Press)。
プッシュの回数やプッシュの速さなどを変えることで様々な味わいを作り出せる自由度の高さも人気の理由の一つだが、毎日使っているうちに「さらにもっと自由に自分好みの味わいをデザインしてみたい!」という気持ちになるのはコーヒーラバーの性。ではどうすればさらなる抽出オプションを増やす事ができるのか??それは、
※金属フィルター=メタルフィルター、ステンレスフィルター、ディスクフィルターとも呼ぶ
エアロプレス用金属フィルターを製造しているメーカーの中で最も有名で信頼のおけるAble Brewing社が2種類のディスクフィルターを販売している。これらの2種類の金属フィルターを使って、それぞれどのような味を表現することができるのか検証し、シェアしたい。
Able Brewing社とは?

Able Brewing社は2009年にアメリカ・オレゴン州のポートランドで創業したコーヒー器具メーカーで、ポートランドの有名コーヒーロースター「Coava Coffee Roasters(コアヴァコーヒーロースターズ)」のスタッフにより立ち上げられた。
強度と耐久性に優れ、金属フィルター特有の粉っぽさを軽減する事が可能なケメックス専用の円錐型フィルター「KONE(コーン)」が世界的に有名。
そのAble Brewing社がエアロプレス専用金属フィルターとして製造開発したのがDisk Filter(ディスクフィルター)だ。このディスクフィルターもKONE(コーン)同様、完全USAメイドにこだわっており、その品質の高さから、日本のみならず世界中のエアロプレスユーザーに絶大な支持を受けている。
元々エアロプレス用だけど使えるの?

「エアロプレス専用なのでもしかしたらデルターには使えないのでは?」と思う方も多くいるかと思うが、その心配はない(写真上参考)。デルターコーヒープレス用に製造されたのかと思ってしまうくらい、ジャストフィットする。

セットする時は文字が見える方(オモテ面)が上になるように置こう。間違えがちなので要注意。
余談だけどエアロプレスの純正ペーパーフィルターはサイズ的にデルターには使えないので注意が必要。デルター専用ペーパーフィルターを使おう。
2種類のフィルターの違い

Able Brewing社は以下の2種類のディスクフィルターを販売している。
■ スタンダード
■ Fine(ファイン)
通常版のスタンダードに対して、Fineは目が細かいのが特徴。
厚さ

写真(上)では少し分かりづらいが、Fineの方がやや薄く、スタンダードに比べ柔らかい。そのためFineは曲がりやすいので取り扱いに注意が必要。ただ普通に使用する分には何の問題もない。
穴の大きさ


スタンダードはオモテ面と裏面の穴の大きさが若干違う。これはコーヒーの液体の出口である裏面の方をやや大きくする事でコーヒーオイルを十分に抽出できるようにするため。穴を拡大して断面で見るとおそらく台形型になっているはず。


Fineの穴の大きさはスタンダードのオモテ面と同じ。スタンダードと違うのはFineの方はオモテ面も裏面も同じ大きさの穴となっている。そのため穴を拡大して断面で見るとおそらく長方形になっているはず。
穴の数

穴の数はFineの方がスタンダードと比較して圧倒的に多い。
スタンダードは抽出出口が広いため穴の数が少なくても適度な抵抗を保ちながらプッシュする事ができる。Fineの方は抽出入り口と出口が同じ大きさのため、穴の数が少ないとプッシュ時に強い抵抗が掛かり押し返されてしまう。
そのためFineの方がスタンダードより多くの穴が空けてあり、スムーズにプッシュするできるように設計されている。
2種類のフィルターによる味の違い

それではいよいよ2種類のディスクフィルターを使ってそれぞれどのような味わいを表現できるのかデルター純正ペーパーフィルターも交えて検証してみよう。同じコーヒー豆(ブラジル 中浅煎り)を使って、以下の記事で紹介しているデルターの基本レシピで抽出した。
前回の記事『革命的なコーヒー器具!デルターコーヒープレス(Delter Coffee Press)の魅力をレビュー』では詳しくデルターコーヒープレス(Delter Coffee Press)の魅力について紹介した。 そして今回は使い方のコツ[…]
液色の違い

パソコンのモニターを通して写真(上)を見るとほとんど違いは分からないが、実際は左のペーパーフィルターがクリアな色合いでやや透明感がある印象。ディスクフィルター2種は金属フィルターで淹れたコーヒー特有の「色の濁り(オイル由来)」があり、スタンダードが一番濁りがあり色が濃かった。
液色の濃さ = スタンダード>Fine>ペーパーフィルター
の順番。
コーヒーオイルの量



これも写真では少し分かりづらいと思うが、実際には、
オイル量 = スタンダード>Fine>ペーパーフィルター
という順番でコーヒーオイルを含んでいた。エアロプレス同様、デルターコーヒープレスもペーパーフィルターを使用した際少しオイル分が抽出される。ただ金属フィルターの場合よりは微量である。
味の違い

ペーパーフィルターは微粉も少なく、スムースなテクスチャ(触感)。クリーンなテイストでフレーバーも感じやすい。
驚いたのはブラジルのコーヒーらしからぬホワイトフラワーのようなフローラルさある。そして微かに感じるイエローシトラスのような綺麗な酸。アフターテイストにはスイートチョコレートのような甘さを伴ったビター感に、ナッツのような香ばしさ。品質の高いスペシャルティコーヒーを体現したような味わい。
Hario V60で淹れた時のようなスッキリな味わいを連想させる。
他の2つに比べ、液色の濃さも油分の量も多いスタンダードはその見た目通り、しっかりとした味わい。微粉感は多少感じられるが気になるほどでもない。
ペーパーに比べると暗めだが、ビターチョコレートやカカオニブのような深みのあるビター感に黒糖を思わせる甘さの余韻。そしてオイルから感じられるボディ感(液体の重さ)とコクは大人の味わいを感じさせる。
フレンチプレスに近い。ただこちらの方が好印象。
見事なまでにペーパーとスタンダードの中間。
油分は適度にありスタンダードと比べると微粉は少なく、滑らかでスムースなテクスチャ(触感)がとても心地よい。また、ペーパーフィルターで感じた時と同じようなフレーバーを感じ、ペーパーフィルターとスタンダードの良いとこ取りという印象。フレーバーとボディが楽しめるFineは個人的にはとても好み。
エアロプレス + ペーパーフィルターで淹れるコーヒーの味わいにとても近い。
最後に

まさか同じコーヒーでここまでの違いが出るとは思わなかった。
そしてどれも全て好印象でそれぞれ個性的。ここからさらに、コーヒー豆の種類やコーヒー豆の量、湯量、湯温、プッシュ時間やプッシュ速度を変更する事ででルターで無限の味わいを作り出す事ができる。
「このデルターコーヒープレスと3種類のフィルターがあれば、ドリッパー、フレンチプレス、そしてエアロプレスが必要ないのではないか?」と思わせるほどの網羅性があり、器具としての大きなポテンシャルを感じる。
デルターコーヒープレス恐るべし。そしてAble Brewingのディスクフィルターとの相性も恐るべし。デルターコーヒープレスとその周辺ツールで自分好みの味わいをデザインする事の楽しさをぜひあなたにも体験してほしい。