原宿・竹下通りから少し路地に入った場所に2019年新たにコーヒーショップがオープンした。
音響機器やスマートプロダクトの商品開発を手掛け、そしてサンフランシスコや北京などに飲食店を4店舗構える中国・北京のベンチャーIT企業「dotcom」が次に仕掛けるのはコーヒーとテクノロジーを融合させた近未来カフェ「dotcom space Tokyo(ドットコムスペーストーキョー)」だ。


地下に位置するdotcom space Tokyo(ドットコムスペーストウキョウ)。
一度その空間に足を踏み入れると、今自分が原宿にいるということを忘れてしまう錯覚に陥るほど洗練され落ち着いた雰囲気を醸し出している。
無駄を排除したミニマルで広々とした店内



無駄なものが無いミニマルな空間の中でコーヒーを楽しむ人や読書をする人、パソコンで作業をする人など各々の時間を過ごしている風景が目に映る。
この広々としたスペースを利用し、今後はコーヒーのイベントはもちろんのこと、コーヒー以外のイベントも催されるとの事だ。
音響機器を開発している企業なだけに店内に流れる音質も抜群だ。
歯医者の待合室で流れているくらいの音量で聞こえてくるハイセンスな洋楽は、とても心地よい空間を演出している。
コーヒーグラインダーにはドイツの歴史的ブランドの最新機種を採用

エスプレッソ用のグラインダーには80年以上の歴史を誇るドイツ・マルコニック社製(マルクーニック/マルケニッヒ)「E65s」を2台使用している。
なんとまだ日本未発売のモデルである。

エスプレッソマシンはオランダのKees van der Westen「Spirit」というブルーボトルコーヒー(BLUE BOTTLE COFFEE)で使用されているものと同じモデルを採用。
コーヒーラインナップにはあの海外の有名ロースターからも
コーヒーは現在2社のロースターから仕入れている。
一つは千葉・船橋に店舗を構えるPHILOCOFFEA(フィロコフィア)。
そしてもう一つはノルウェーの首都オスロにある有名カフェ・FUGLEN(フグレン)の東京支店であるFUGLEN TOKYO(フグレントウキョウ)のロースターから。

それぞれのコーヒーの持つフレーバーが視覚的に分かるようにイラストで記載されている。自分の好みにあったコーヒーを注文前に確認できるのでとても嬉しい。

コーヒーの情報が記載された紙と一緒に焙煎された豆のサンプルも置かれている。
見るだけでも楽しいし、またどのくらいのローストレベル(焙煎度)なのか知ることもできるのはコーヒーラバーにとっては嬉しい限りだ。

広々としたカウンターには東京・代々木のminimal(ミニマル)のチョコレートが並べられている。
スペシャルティコーヒーと同じようにそれぞれの個性やフレーバーを楽しむことができる「本物」のチョコレートである。
2016ジャパンハンドドリップチャンピオンが在籍

どんなに良いロースターからコーヒーを仕入れていても、その豆の特性を知り、それ活かした抽出ができなければそのコーヒーのポテンシャルを最大限引き出すことができず、質の良いコーヒーを台無しにしてしまい兼ねない。
しかしdotcom space Tokyoに関してはその心配はない。
JHDC2016(ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ2016)のチャンピオン佐藤氏が在籍しているこの店舗では、クオリティコントロールがしっかりできているのは自明の理である。
安心して美味しいコーヒーを飲むことができる。
コーヒーをさらに美味しく飲むための工夫

コーヒーと共にコーヒーの情報が記載されたカードが付いてくる。
カードを見ながら、そのコーヒーがどのような国や場所で生産され、どのようなロースターがどのような想いでローストしたのかを想像しながら楽しむことができる。
あなたが飲んでいる一杯のコーヒーはただの黒い液体ではない。
農園からカップに注がれるまでに多くの人の想いが詰まった情熱の結晶なのだ。

200ml(カップ約2杯分)とたっぷりの量のコーヒーを楽しむことができるので、
1杯目は湯気とともに立ち込めるアロマと一緒にフレーバーを楽しみ、2杯目は冷めた時により感じることができるコーヒー本来が持つ甘さを楽しむ。

飲む前にスワリングをすることで香りが開き、コーヒーが持つアロマをより一層楽しめる、とバリスタの方から説明を受けた。
コーヒーの美味しい飲み方を一番よく知っている専門家に聞くことでコーヒーの楽しみ方はどんどんと広がっていく。

コーヒーカップにはノルウェー FIGGJO(フィッギオ)のカップを使用している。バリスタ世界チャンピオン・ティムウェンデルボーとのコラボプロダクトで日本ではまだ他の場所で見たことがない貴重なコーヒーカップ。
口が広いため、飲む時に香りが鼻全体を包み込む機能的なデザイン。
「コーヒー×テクノロジー」

人間がプログラミングした動きをミリ単位で再現するという最新型のドリップ特化型ロボット「Drip」。
人間による抽出のブレが減ることにより、常に安定した味を再現することができる。
シンプルで美しいデザインも近未来を感じさせる。

自動ディスペンサー「Drop」
上の写真は自動ディスペンサー「Drop」。
下にグラスやピッチャーを置くと、コールドブリューやミルクが自動で出てくるような仕組みになっている。

水にも自動ディスペンサー「Drop」を採用しているところがdotcom space Tokyoらしい。
「コーヒー×テクノロジー」の融合によって生み出されるものとは?

経験や勘がものを言った一昔前のコーヒー抽出の世界において、デジタルコーヒースケールやタイマーなどを駆使し味の再現性や安定性を重視する事が当たり前のようになってきた現在、人間であるバリスタはそのようなツールをうまく使いこなせる事が必須になってきている。
そして今回dotcom space Tokyoが見せてくれたコーヒー業界の次の未来。
コーヒースケールなどのようなコーヒー専用ツールさえも必要とされなくなり、今まで人間が行なっていたコーヒー抽出をロボットが代わりに全て行なっていく。
確かに人間より優れている点が多くあることは否めない。人件費も掛からず、何時間も何十時間も文句も言わずに安定したコーヒーを連続して抽出する事ができる。
こうなると、コーヒーを抽出する「バリスタ」という職業がロボットに取って代わりバリスタという職業の存在意義がなくなってしまうのではないかという危機感を覚える人もいるかもしれないがそんなことはない。
むしろバリスタの可能性はより広がっていく。
コーヒーと最新鋭のテクノロジーの融合によって生まれるのは
「顧客とのコミュニケーション」
である。
人間が今まで行っていた作業を最小限まで減らすことでバリスタの疲労が軽減され、その分余力と時間が生まれれば、バリスタは顧客とのコミュニュケーションの時間を増やす事ができ、より踏み込んだコーヒー情報の説明や、顧客からのヒアリングからの適切なコーヒーの種類の提案、ひいては顧客とのたわいも無い日常の会話などで顧客満足度を向上させることができる。
また新しい商品開発やイベント企画をする時間をも捻出することができ、コーヒーを淹れるという以外のまた違う分野でバリスタとしての存在価値を見出すことができるだろう。
そして、コーヒーの品質、バリスタ及びロースターのスキルが昔に比べ格段に向上し、美味しいコーヒーに誰もが簡単にアクセスできる時代になりつつある今、顧客がコーヒーショップに求めるのは美味しいコーヒーだけではなく「付加価値」である「バリスタとのコミュニケーション」だ。
顧客が求めているものをテクノロジーが解決してくれる。
テクノロジーがどんどん発達することで人間が介入する隙間が無くなっていき、「人と人との心の触れ合い」という人間の根幹的な欲求が希薄になっていくのではなく、むしろテクノロジーの発達によって「人と人との心の触れ合い」はより生み出されていくのである。
dotcom space Tokyoが見せたコーヒー業界の未来は明るい。
店舗情報
住所 | 東京都渋谷区神宮前1-19-19 |
営業時間 | 火~日 9:00~21:00 |
禁煙喫煙 | 禁煙 |
エスプレッソマシン | Kees van der Westen「Spirit」 |