アメリカンプレスとフレンチプレスを徹底比較してみた[レビュー]

「これはフレンチプレスではない。アメリカンプレスである。」

(It’s not French Press, It’s…American Press. A new way to brew.)

 

とメーカーが謳っているように、アメリカンプレス側はフレンチプレスと一線を引くように明確に区別している。ここ数年でよくSNSでも見かけるようになったコーヒー器具「アメリカンプレス」とは一体どんな器具なのか?

比較的良い評判を聞くので気になって購入し1ヶ月間使ってみた。今回の記事ではアメリカンプレスと比較される事が多いフレンチプレスとの違いを交えて、実際に使用して感じたアメリカンプレスのメリット・デメリットに関しても言及している。


アメリカンプレスの購入を検討している人にとって有益な記事になれば幸いである。

 

 

この記事がおすすめな人

■ アメリカンプレスの購入を検討している人
■ フレンチプレスとの違いを知りたい人
■ その他類似器具との違いを知りたい人

 




使用するコーヒー

今回はエチオピアのナチュラルプロセスのコーヒーを使用する。焙煎度合いは浅煎り。豊かなベリーを思わせるフルーティなフレーバーと華やかさが特徴でウォッシュトプロセスよりフレーバーが分かりやすいので、器具の比較には向いている。エイジング(焙煎からの経過日数)は10日目のものを使用する。









抽出方法の違い

アメリカンプレス → 透過式

アメリカンプレスの抽出方法は透過式。透過式は簡単に言うとお湯を挽いたコーヒー粉の層に通過させてコーヒーの成分を抽出するというもの。透過式の代表的なものといえばドリップ、デルターコーヒープレスなどが挙げられる。

透過式で淹れると比較的すっきりとした味わいのコーヒーになりやすい。さらにペーパードリップであればステンレスフィルターと違い余分な油分や微粉も吸着してくれるためよりクリーンな印象のコーヒーになる。









フレンチプレス → 浸漬式

フレンチプレスの抽出方法は浸漬式(しんししき)。浸漬式とは簡単に言うと挽いたコーヒー粉をお湯の中で一定時間漬け込みコーヒーの成分を抽出するというもの。浸漬式の代表的な器具といえばフレンチプレスの他にクレバーコーヒードリッパーなどがある。

浸漬式はコーヒーの特徴を余す事なく引き出してくれる。特にステンレスフィルターを使うフレンチプレスはカッピングと同様、コーヒー豆の特徴がダイレクトに抽出できる。ただ良くも悪くもダイレクトに抽出されてしまうのでコーヒーの品質に左右される抽出方法とも言える。


関連記事

「自宅でも美味しいコーヒーが飲みたいけど淹れるのがめんどうだな・・。」 そんなジレンマを抱えた人の悩みを100%解決するコーヒー器具が、隣国・台湾から生まれた「クレバーコーヒードリッパー(Clever Coffee Dripper)」だ。も[…]









アメリカンプレスとフレンチプレスのコーヒーの共通点

前述の通り、透過式・浸漬式という抽出プロセスに双方の違いはあるが、アメリカンプレスとフレンチプレスで抽出したコーヒーには共通点もある。

アメリカンプレス、フレンチプレスはどちらも共にペーパーフィルターを使用しない抽出方法のため、オイル分が溶け出したコーヒーに仕上がる。

コーヒーから出るオイルは別名アロマオイルと呼ばれており、コーヒーの香気成分が内包されている。この油分が液体にボディ感をもたらし、シロップのような質感のコーヒーを作り出す。








抽出工程の比較

アメリカンプレスの抽出工程

中挽きで挽いたコーヒー22gをセットする。コマンダンテであれば28〜32クリックあたりを推奨。(詳しくは以下の記事参照)

関連記事

手挽きコーヒーミルは国内・国外にて様々なモデルが開発・販売されている。 ■ ポーレックス(Porlex)■ Zpro(ジープロ)■ Timemore(タイムモア)■ Kinu(キヌ) M47 など高品質なモデルが各社で続々と発表されている群[…]








メッシュフィルターの付いた上部パーツを取り付ける。メッシュフィルターは下のパーツにも付いている。








プランジャーに装着しセット完了。








ポッドに355g(95℃)のお湯を入れプランジャーをゆっくりと下げていく。








粉全体がお湯に浸かる位置で一度ストップし、1分半蒸らす。








蒸らしが終了したら1分半かけてゆっくりとプランジャーを押し下げていく。22gの粉を使用し粉の層にしっかりと厚みがあるので押す際に抵抗を感じるが、これは適切な圧力が掛かりながら抽出されている証拠。








最後まで押し切ったら抽出完了。

上記の工程を見てもらえればテクニックがほとんど必要なく誰でも簡単にコーヒーを抽出することができるということが分かる。そんなテクニック要らずのアメリカンプレスだが蒸らし時間プレス時間の2点だけは気をつけたいところ。

蒸らしはコーヒー豆に含まれるガスを抜き、粉の一粒一粒にお湯を浸透させやすくするいわゆるプレスのための準備段階。この蒸らしをせずにプレスを始めるとスッキリを通り越して薄いコーヒーになってしまう。ただあまりにも長すぎる蒸らしは逆に味が重くなってしまう。つまり短すぎても長すぎても良くない


コーヒー豆のエイジング(焙煎されてからの日数)が早ければ蒸らしを長めに、長くエイジングを取ってあれば蒸らしを短めにすると良いだろう。またエイジング関係なく浅煎りの場合は抽出効率が悪いのでやや気持ち蒸らし時間を長めにとっても良い。とりあえず1〜2分ほど蒸らせばどんなコーヒーでも大きく外すことはないだろう。


蒸らし時間に加え、プレス時間も大切。焦らずゆっくりじわじわと押していく必要がある。いくら適切に蒸らしが行えても、プレスが早すぎると未抽出の薄いコーヒーになってしまうので、焦らずじわじわプレスするのがコツ。プレス時間は1分〜1分半が目安。


その2点を特に気を付ければ初めてでも簡単に美味しいコーヒーが抽出できる。









フレンチプレスの抽出工程

中挽きで挽いた15gのコーヒーに225mlのお湯を一気に注ぐ。








プランジャーで蓋をして4分間待機。








 4分経過したら粉が舞ってしまわないようにゆっくりと下までプレスして完成。


アメリカンプレスも非常に手軽に抽出ができる器具だがフレンチプレスには到底敵わない。フレンチプレスはコーヒーの抽出方法の中で一番簡単と言っても過言ではない。


上記の説明のように挽いたコーヒー豆をフレンチプレス内にセットしお湯を注ぎ、プランジャーを押して4分待つだけ。アメリカンプレスと違い抽出中は手を離すことができるのもGood。








味わいの違い

TDS計を使い同じ濃度・収率になるように粉とお湯の比率を調整して抽出した。アメリカンプレスとフレンチプレスの味わいの違いはアメリカンプレスの購入を悩んでいる人が最も気になるところだと思う。比較していきたい。


濃度と収率について詳しく知りたい方は以下の記事から。

関連記事

コーヒーの収率とTDS (濃度)。 収率とTDS(濃度)はプロのバリスタであれば絶対に知っておかなければならない知識。コーヒーという液体に対して、収率やTDSなどの数値を算出し客観的にコーヒーを評価・判断する事が世界のコーヒーシーンではスタ[…]







 

アメリカンプレスの味わい

お湯にコーヒー粉の層をゆっくりと通過させるという抽出方法のため、ドリップコーヒーなどのように湯を注いだ際のアジテーション(攪拌)が起きない。そのためドリップコーヒーよりさらにすっきりとした味わいになる。そしてすっきりした味わいの中にもオイル由来のボディ感もあるので今までに味わったことのないなんとも新しい味わい。

またステンレスフィルター抽出特有の微粉の混入が少なく、味の濁りがないクリーンな味わいも特徴。コーヒーの持つフレーバーを感知しやすい。ベリーを思わせるようなフルーティなエチオピアのフレーバーを楽しむのにアメリカンプレス はかなり高相性だと感じた。

ただ2杯目は明らかに味わいが変わる。1杯目のクリアな印象は消え過抽出による収斂味や雑味を感じた。対策としては抽出が完了したら2人で飲む場合は2杯分速やかにカップに取り分けよう。


一人で2杯分飲む場合はプランジャーを抜き去るのがおすすめ。これができるのがアメリカンプレスの良さでもある。(詳しくは後述)









フレンチプレス

フレンチプレスはアメリカンプレスのような透過式ではなく浸漬式(しんししき)という抽出方法のためコーヒーの成分を余すことなく抽出することができる方法である。

様々な成分が溶けだしていることにより味わいは非常に複雑であるが、クリーンさにはやや欠け、エチオピアのフルーティなフレーバーの阻害要因となる成分も少なからず抽出されている。

オイルによるボディ感とトロみのあるシロッピーなマウスフィールが感じられるが、同時に微粉の混入も多く液体中に微粉が浮遊しているためマウスフィールにややザラザラとした印象を受ける。この粉っぽさがフレンチプレスで淹れたコーヒーを個人的に受け付けない理由でもある。









微粉量の違い

ステンレスフィルターによる抽出でセットとして必ず語られる微粉問題。アメリカンプレスは微粉の混入がフレンチプレスより少ないと言われているが実際のところどうだろう。検証していきたい。








アメリカンプレス抽出による微粉量

アメリカンプレスはあくまでも「ステンレスフィルターを使った抽出器具」なので多くの微粉が混入してしまうだろうと思っていたが、カップの底を確認してみると微粉の混入は非常に少なかった。これには正直驚いた。(写真上参照)

理由はメーカー推奨の中挽きで抽出をしていること、アジテーションが起こらないこと、上下についたステンレスフィルターのメッシュが微細であることが理由だろう。

完全100%微粉を除去できるわけではないがステンレスフィルターでここまで微粉をカットすれば十分であると感じる。飲んでも微粉によるマウスフィールのざらつきというのは全く感じず、むしろ油分によるなめらかなマウスフィールを楽しむことができた。想像を超えた結果となった。








フレンチプレス抽出による微粉量

アメリカンプレスのように粉とお湯を分離しながら抽出することができないこととステンレスフィルターによる微粉カット力に難があるため、カップへ多くの微粉が混入した。(写真上) 


カップ底に多くの微粉が沈殿しているため飲み進めて量が減っていくにつれて過抽出の味わいが支配的になってくる。それに加え、最後の方はざらついた舌触りが強くなっていく。やはり微粉のカップへの混入はフレンチプレスの永遠の敵である。

もし今すぐ微粉を抑えたい場合は以下で解説している方法が有効。上述した通常のやり方よりも微粉の混入が幾分抑えられる。

 

関連記事

僕は以前までフレンチプレスで淹れたコーヒーがあまり得意ではなかった。というのも飲む時にザラザラとした粉っぽさを舌に感じてしまい最後まで美味しく飲む事ができないと感じていたからだ。   「挽いたコーヒー豆にお湯を注ぎ、待つ」だけというシンプル[…]









手入れ・掃除の簡単さ

アメリカンプレスの手入れ・掃除

まずはプランジャーを抜く。









上部のパーツを取り、ひっくり返してトントンと軽く叩きそのままゴミ箱へ。







 

洗うパーツは分解すると5パーツ。









パッキンも外し全て洗うとなるとパーツは8つ。洗わなければいけないパーツがやや多いのは難点。









フレンチプレスの手入れ・掃除

まずはプランジャーを外す。








スプーンである程度コーヒーかすを掻き出して取り終わったら残りの粉を水でジャバジャバして、中性洗剤で洗って終了。







 

洗うパーツは基本的には上の2つ。よくフレンチプレスは片付けが面倒だと言われる器具の一つだが個人的にはかなり簡単だと思っている。洗うパーツが少ないのも利点。









アメリカンプレスにしかできないこと

実はアメリカンプレスにしかできないことがある。それはプランジャーを好きなタイミングで引き抜くことができるという点だ。これはフレンチプレスには絶対にできないこと。








お湯から完全に分離することができるので余計な過抽出を防ぐことができる。粉を取り出したら、プランジャーを蓋がわりに被せて完了。2杯目をゆっくり自分のタイミングで楽しむことができる。









エアロプレスとの比較

アメリカンプレスは誰でも手軽に美味しいコーヒーを作ることができるが自由度はやや低い。その反面、エアロプレスは抽出オプションは多種多彩だ。

ペーパーフィルターを使いクリアな印象のコーヒーを作ることもできれば、ステンレスフィルターを使いオイル感のあるコーヒーを作ることもできる。逆さにするインバート式というやり方もあったりする。

またFellow社のPrismoを使えばエスプレッソのような濃厚なコーヒーを抽出することもできる。抽出オプションの多さに加え、レシピの自由度も高い。色々とコーヒー抽出で遊びたい人にはエアロプレスが向いているだろう。

 

関連記事

今や不動の地位を築いたエアロプレス。レシピも様々で自由度が高い。しかし、「エアロプレス  淹れ方」で検索するとエアロプレスのレシピが山ほど出てきて、自分のお気に入りのコーヒーがどのレシピに適しているかがイマイチ分からない。そこでチャンピオン[…]

関連記事

バリスタやコーヒーラバーの間ではよく知られたエアロプレスの抽出方法の一つ「インバート式(逆さ式・反転式)」のやり方について、今回はシンプルな写真を使って簡潔に説明したい。これから初めてインバート式に挑戦する方や、やった事はあるけどいまいちイ[…]

関連記事

ずっと前々から気になっていたコーヒー器具があったのでFELLOW公式HPから海外通販で購入して実際に使ってみた。単刀直入に言うと中々すごい。 プロも惚れ込む高い機能性のみならず使っていて楽しくなるようなスタイリッシュなコーヒー器具を[…]

 










デルターコーヒープレスとの比較

イノベーティブなコーヒー器具として注目を浴びているデルターコーヒープレス。抽出プロセスはほぼアメリカンプレスと同じと言っていい。コーヒー粉の層をお湯に通過させるか(アメリカンプレス)、コーヒー粉の層にお湯を通過させるかの違いである。

ただデルターの方が抽出オプションの幅は広い。ステンレスフィルターを使えばアメリカンプレスのような味わいのコーヒーを作ることができるし、ペーパーフィルターを使えばハンドドリップのようなコーヒーを作り出すこともできる。

また抽出レシピも自由度が高い。一回のみのプレスであるアメリカンプレスと違い、デルターはプレス数、プレス毎の湯量を自由自在にコントロールすることができるのでより自分好みの味わいをデザインしやすい。そのため抽出の面白さで言ったらデルターの方が断然上だろう。

 

関連記事

「コーヒーの新しい抽出方法」と聞いて、その響きに心ときめかせるコーヒーラバーは少なくないだろう。新しく、そしてユニークな抽出方法を実現できる抽出器具「デルターコーヒープレス(Delter Coffee Press)」が現在世界中で話題になっ[…]

デルターコーヒープレスとは コーヒーリテラシー
関連記事

高い再現性とクリーンなテイストに仕上げることができるのが特徴のデルターコーヒープレス(Delter Coffee Press)。   プッシュの回数やプッシュの速さなどを変えることで様々な味わいを作り出せる自由度の高さも人気の理由の一つだが[…]

 

 










アメリカンプレスの良いところ、残念なところ

 アメリカンプレスの良いところ

■ 誰でも簡単に抽出できる
■ 微粉の混入が少なくクリーンな味わいになる
■ 粉を引き抜ける
■ パーツがしっかりしている

 
 アメリカンプレスの残念なところ

■ 洗うパーツがやや多い
■ 価格が高い
■ 自由度が低い











最後に

アメリカンプレスを実際に使うまでは正直全く期待していなかった。企業案件と思われる記事や動画が多くその良さをあまり信用できなかったからだ。ただ、実際に使ってみると意外と良い抽出器具であった。

ステンレスフィルター特有のザラついた触感のコーヒーが苦手な僕が最後まで美味しく飲めたのが自分でも不思議に感じたほどである。

ドリップのすっきりした味わいとフレンチプレスのボディ感の良いとこ取りのコーヒーを誰でも簡単に作ることができるアメリカンプレスはフレンチプレスのコーヒーに満足していない人や、手軽に美味しいコーヒーを淹れたい人に最適だと思う。

ぜひ一度手に取ってその良さを実感してほしい。